日本代表は川崎フロンターレ化を加速させてW杯優勝を目指したい理由

結論①
 チームとしての練習時間が限られる代表サッカーで良い結果を出すには、普段一緒に沢山練習している調子の良いクラブチームを土台にした代表作りの方が良い結果が出る。

 結論②
 モチベーターの森保監督とイノベーター(革新的な戦術)な風間八宏さんの二頭体制が理想。

 まず、カタールW杯への出場が決まって本当に良かった。特に出場を決めたアウェイのオーストラリア戦は森保監督らしいサッカーを体現できた試合で素晴らしかった。

 とはいえ課題も多く残った森保JAPANが、今後は何を伸ばし、何を改善すればW杯で良い結果を出せるのか、我々サポーターも含めて声を上げる事が、日本サッカーの為になると信じているので、個人的な想いをまとめたい。

----------------------------------------------------

 森保監督は、基本的には守備から入る戦略家ではあるが、攻撃に関する戦術はあまり持ち合わせてはいない。森保JAPANの攻撃は個のスキルや判断に任せている事もあり、攻撃の選手の調子が悪い時や、守備力の高い世界の強豪、もしくはアジアレベルでも引いた相手と戦うと行き詰まってしまうサッカーである事は、メダルに届かなかった東京五輪やW杯最終予選で証明されてしまった。

 チーム練習があまりできない代表サッカーは、個人のコンディションと能力を最大限に引き出すことを重きに置いたカウンターサッカーになりがちだ。となると個の能力が元々優れている選手が多くいる国がW杯では上位を占める事になり、個の力がまだ劣る日本代表が個と個のガチンコ勝負をW杯でしても厳しい結果になってしまうだろう。

 そこで国内の強豪チームを土台にしたサッカーを日本代表は取り入れる事で、チームの連携力というアドバンテージを練習不足の強豪国に対して保つ事は、上位を狙う上で必須になると考える。
 これまでの日本は鹿島等強いチームはあったが、強くて早くて上手い外国人選手ありきのカウンターサッカー頼みだったのは否めない。だが今のJリーグには個の力に頼りすぎなくても常勝となったチームがある。それが川崎フロンターレだ。

 つまり日本代表サッカーの土台とすべきは、常勝軍団川崎フロンターレのサッカーではないだろうか。毎年何人もの主力が抜けても今の川崎が強いのは、システム化された戦術が根底にありクラブに浸透しているからだ。それを代表サッカーの土台にさせてもら事で、練習不足問題を解消し、W杯でより良い結果を出せるのではないだろうか。

 これは何も、私個人のアイデアでもなんでもなく、過去のW杯を見れば明らかに有効な戦略だという事例を紹介したい。

 ここで、過去4大会W杯で優勝した国と土台となった国内のクラブチームを紹介したい。

・2018年ロシアW杯
 優勝国:フランス(パリサンジェルマン

・2014年ブラジルW杯
 優勝国:ドイツ(バイエルンミュンヘン

・2010年:南アフリカW杯
 優勝国:スペイン(バルセロナ/レアルマドリッド

・2006年:ドイツW杯
 優勝国:イタリア(ユベントス/ACミラン

 (W杯優勝チームはUEFAチャンピオンズリーグを優勝出来るのか、という議論があまり盛り上がらないのは、代表はチーム練習が圧倒的に不足している寄せ集めチームなので、ベスト16にも残れない事が明白だからと個人的には考える)

 特に注目すべきは、南アフリカ大会とブラジル大会だ。
 南アフリカ大会で優勝したスペインの土台となったチームはバルセロナ。監督はレアル・マドリードを率いたデルボスケだが、グラウディオラが率いていたバルサのサッカーを取り入れ優勝した。当時レアルは銀河系と呼ばれたドリームチームではあったが、主流だったのは外国人選手。一方バルサは下部組織出身の選手が主流でメッシをゼロトップに配置した画期的なティキタカフットボールで欧州を席巻したチームだった。そこで代表監督のデルボスケはシャビ/イニエスタ/ブスケツ/プジョルを中心としたバルサ組をチームの土台にして、フェルナンド・トーレスカシージャスを適所に配置した采配がズバリ的中し、スペインにW杯初優勝をもたらしたと記憶している。

 ブラジル大会でドイツが優勝した時は、言うまでもなくバイエルンミュンヘンが土台となったチームで、この時のバイエルンを率いていたのもグラウディオラだ。ドイツ代表監督のレーブ監督は、そんなバイエルンの選手と戦術を土台にする事で、ドイツをW杯優勝に導いた。

 つまり最近のW杯は欧州の強豪リーグの強豪チームが主体となったチームが、W杯で優勝している事になる。

(ちなみにこの法則性だとカタールW杯は、現在最強のプレミアリーグを抱えるイングランドが優勝に近いと思う。ただ、良い選手は沢山いるのだが、強豪チームも沢山ありすぎて、まとまりきらないサッカーになり優勝はできないかもしれない)

 もちろん日本がW杯で優勝するには、Jリーグが世界トップレベルにならないとダメなのですが、初のベスト8/ベスト4へと突き進むには、今のJリーグ常勝軍団の川崎が主体としているサッカー(ポゼッション)を取り入れ、チーム力を高めた方が世界の強力な個に対しては有効だ。

 幸いにも今の代表メンバーには、川崎のサッカーを知っている選手が沢山いるので合理的でもあり、生産性の高い(得点力)サッカーを魅せてくれる確率は高まる。

 現在の守備とモチベーションに力点を置いた森保サッカーの攻撃力を最大化するには、メンバー選考以外でも改善出来る余地は大いにあり、それが風間八宏さんの招聘だと考える。

 風間さんは監督時代にタイトルは獲れなかったが、常勝川崎の代名詞といえる攻撃サッカーの礎を作ったポゼッションサッカーの戦術家だ。まだ日本人選手が圧倒的な個の力で世界を席巻出来ていないからこそ、その足りない個の力をチーム戦術で補って欲しいと思う。

 今はまだ高さや強さや経験では世界に勝てない日本だが、個の技術は間違いなく世界に近付いている。相手チームの攻撃時間を減らす為にも、ポゼッションをしながら、パスを横に繋ぐだけではなく縦にも入れながら、ゴールライン近くの敵陣奥深くまで入り込んで、マイナスの低いクロスを何度も上げて沢山のチャンスを作りたい。
 具体的には、カタールW杯最終予選でのオーストラリア戦の一点目の取り方だ。全て川崎の選手でパスを繋ぎ、敵陣奥深くまで入り込み、マイナスの低いクロス上げて、最後はワンタッチでシュートし、三苫選手が得点したあの攻め方だ。
 そんなサッカーを川崎で体現した風間さんの攻撃サッカーを代表にも取り入れ、その上で川崎以外のスペシャリティ-プレイヤーを適所に当てはめたチームこそが、現時点での理想の日本代表だと主張したい。

 最後に実現性と必要性を考えたい。前例が無い訳ではない。
岡田武史元日本代表監督が南アフリカW杯前に攻撃力の強化を図る為に、当時甲府で攻撃的なサッカーを展開していた大木武さんを岡田JAPANに招聘した事例がある。二人は同期という事もあり旧知の間柄だったそうだが、森保監督と風間さんの関係性はわからないし、保守的な協会は恐らく現状変更の二頭体制は否定的かもしれない。だが、日本人選手の個の力がW杯までに劇的に伸びるとは考えづらいので、背に腹はかえられない人事を期待したいところだが、現場はどう考えるのか注目したい。

 もしくはこの際、監督を交代したらいいじゃないかと思うかもしれないが、W杯出場を決めた森保監督を解任する事は、それこそ現実的ではないだろうし、森保JAPANで結束している選手のモチベーションも下がりかねない。だとすると現在の森保体制に新たな日本人コーチを招聘して、アップデートした方が上手く物事が運ぶのではないか。その理想の人事が、個人的には風間八宏さんだと考える。

 そもそも森保監督は今の代表に必要だ。理由はやはり主力選手からの信頼は厚いと傍から見て感じているのと、国内の日本人選手の事をよく知っているのと、海外からオファーを受ける日本人指導者を育てる芽をわざわざ今積んでしまうことは、長期的には日本サッカーの為にならないと考えている。(後には、西野元代表監督みたいに海外で監督をして欲しい森保さん)

 ただW杯本番に向けて、テコ入れの必要性が試合毎に高まっている森保JAPAN。できれば解任というハードランディングではなく、もしくは保守的な現状維持という代表運営でもなく、森保体制を維持しつつ新たな日本人コーチを招聘するという、ソフトランディングなテコ入れの方が効果的で効率的であり、素晴らしい結果を日本代表にもたらせてくれると信じている。